さらば愛しきサスペンス映画
三人旅の一人乞食
こういう「本物」の方の言葉って重みもあるし面白いし、日頃ネット上の駄文(含む自嘲)ばかり目にしている身にとっては陳腐ながら「一服の清涼剤」のような本であります。
お二方とも今や本邦最高レベルの映画批評家であると同時に(ここが重要)映画ファンなのであります。だから面白くなかろうはずがないと読みだしたのでありますが。
ネットを含め無知なライターの出鱈目な映画紹介や評論を読まされたときは、大げさではなく怒り心頭に発するおれですが、このお二人の対談ならそんな目に遭いっこない。それは当然です。まあ、なんと博覧強記な映画マニアでありましょうかと、感心感動して読んでいたのは、実は冒頭の数ページまで。
気が付けばどんどん置いていかれるおれがいる。
ラマヌジャンとポアンカレの数学対談を読んでいるみたいと言ったら言い過ぎか知らん。「ああ、この映画見た」「ああ、知ってるけど見てない」「知らない」なんてレベルではない。知らない映画題名がどんどん出てきて、しかも、それに係るキャストやスタッフやエピソードがどんどんおっ被さって。まあよくもこれだけ映画を見て内容を覚えていて、しかも配役から脚本から監督から――
知らない、知ってるという次元でないところが恐ろしい。まさか「サスペンス映画」の世界でこんな思をしようとは。
「三人旅の一人乞食」とはこのことです。あ、もちろんおれが乞食――
おれは映画秘宝のライターが書き散らすいい湯加減の映画話がお似合いなのかなと、今更悟ったという、情けないお話でありました。
Ramanujan: Letters and Commentary (History of Mathematics)
- 作者:Ramanujan Aiyangar, Srinivasa,Berndt, Bruce C.,Rankin, Robert A.
- 発売日: 1995/08/01
- メディア: ペーパーバック