太陽の下、三死体  ジャック・サドゥール

 超超超意外な結末。

 映画であれ小説であれ、ラストにどんでん返しというネタばらしくらい悪質なものはない。ばらしている本人は具体的なことはなにも語っていないんだから許されると思っているところが更に悪質。この「ラストにどんでん返し」の一言で映画や読書の愉しみが半減したことがしばしばあるおれにとっては、人生の何%か損をしたような気分になってしまう。
 映画ならポール・ニューマンのあれとかローレンス・オリビエのあれとか、想像した通りの結末で、周囲で感嘆の声をあげている観客がなんとも羨ましく思えたものだ。
 なんてことを書いておきながら、超超超意外な結末のミステリーをご紹介するとしよう(ヲイヲイ)。

 物語の舞台は南仏の避暑地カシス。ヌーディストやカジノ客で賑わうこの街で三件の連続殺人が発生した。探偵役は若き美人警視ミュリエル。照りつける太陽の下、ミュリエルは果たしてこの事件を解決できるのか――
 フランス推理小説大賞の受賞作だから、夢オチのオカルトのというトンデモ結末ではない。しかし、こんな物凄いラストを誰が想像しただろうか。なにしろ、それしか書けない。何を書いてもネタばらしになるという類の小説ではない。意外な結末をささえる小説の骨子ごとひっくり返しているからだ。だからバカミスとネットで話題になりそうなものだが、ネットで検索してもそこに言及したものはない。というより、この作品を取り上げているサイトも全くと言っていいほど無いのだ。だからびっくりして大騒ぎしているのはおれだけなのかも知れないが。
 騙されたと思ってとも書きにくいが、究極の意外な結末を自分で読んで体験するのもいいんじゃないかなと思うのですね。お薦めはしませんが。

太陽の下、三死体 (新潮文庫)

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